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「世界とつながる」・「ホンモノと出会う」学校へ。生徒が「アジアンドキュメンタリーズ」から作品を選んで視聴。

八千代松陰学園

担当教諭 金岡辰徳さん


八千代松陰学園では、生徒の「もち味を生かす」学びのプラットフォームとして「土曜講座」を開設し、生徒一人ひとりに、価値の多様化する時代を生き抜く力を身につけさせよう、「自分」をつくる「新しい学びの場」で存分にチャレンジする機会をつくろうとされています。学力向上のための学習系講座ばかりではなく、探究活動に関心のある生徒・保護者が、教育スキルをもつ民間企業や法人、地域の課題意識をもつソーシャルワーカーなどが一体となって講座を盛り上げています。この講座でアジアンドキュメンタリーズをご活用いただいています。担当教諭の金岡辰徳さんや生徒の皆さんにお話を伺いました。



――ドキュメンタリー映画をどのように活用していますか。

 

(金岡先生)必修授業ではない「土曜講座」のプログラムに採用しています。土曜講座は生徒一人ひとりが、価値の多様化する時代を生きていく力を身につけるために設けられたカリキュラムで、年間で約150の講座を実施しています。ドキュメンタリー映画については、生徒たちが作品を選んで視聴し、意見交換しています。これまでに1回あたり4〜12人の生徒が参加しました。人数が多いときはグループに分かれて意見交換していますが、生徒たちは「もっといろんな人と話したい」と意欲的です。


――視聴作品の選定は誰が行うのですか。

 

(金岡先生)起点となった1作目、2作目は教員が決めましたが、その後は生徒たちの視聴希望をまとめて作品を決めています。受講生は中学生、高校生の両方が対象です。ゆくゆくは保護者も参加できるような講座にしたいと思っています。

 

――生徒たちは普段、ドキュメンタリー映画を見る機会が少ないと思うのですが、反応はいかがでしょうか。

 

(金岡先生)反応について、強調したいことが二つあります。一つは「生徒たちの知見が広がる」。もう一つは「観れば観るほど」です。「知見」については、中高生がなかなか触れられない「社会のリアル」「世界のリアル」を、映像を通して感じることができること。「観れば観るほど」は、たとえば1本目に『ブラッド・ブラザー』で途上国の現状を知る。2本目では違う地域の途上国が舞台の作品を見ると、つながりが生まれてきます。「どんなことが問題になって豊かになれないのか」。生徒たちが学びをつなぎ始めるのです。さらに続けていくと「人間の本質は何なのか」を考え始める生徒もいます。

 

――作品は全員で視聴するのですか、それとも生徒が事前に視聴して参加するのですか。

 

(金岡先生)個人にアカウントがあるので、生徒は自分のタイミングで視聴し、教室では視聴後の状態で会うのが基本。授業に出られないときでも作品を視聴する権利はありますし、生徒自身のタイミングで関わることができます。学びの主導権を教員が持っているうちは主体的な学びにはなりません。生徒たちがいつでもアクセスできて、観たい時に観られるのが利点だと思います。

 

――気になるシーンは場面を戻してもう一度観たり、途中で止めて地図や資料を開いたりもできます。講座の前に制作者の意図や社会背景を調べることもできますし、調べるとさらに見えてくるものもあります。生徒の充実感はいかがでしょうか。

 

(金岡先生)生徒たちを見ていて最初に感じるのは、「観て思ったことを誰かと共有できる面白さ」ではないでしょうか。コロナ禍で対面の授業が難しかったこともあり、自分が思っていること、感じたことを、誰かと共有できる喜びが伝わってきます。胸に迫る、重いテーマの作品では、どういう心の整理をつけているのかが気になりますが、葛藤しながらも学びにつなげようとしいう姿勢が見られます。この講座では学年も性別も関係ありません。高校生が中学生の意見にも耳を傾けます。この映画を軸に集まった「学びたい人たち」の関係なのです。生徒たちはのびやかに、作品を通して普段触れられない情報に触れている。視聴後のワークについても申し分ないです。この講座での教員の役割は、時間と場所の提供者にすぎません。ファシリテーターは入りますが、生徒たちで議論を進めています。



土曜講座には弊社代表の伴野も参加させていただきました。


 

高井和歩さん(高校2年生)

 

――この講座を受講したきっかけについて教えてください。

 

(高井さん)将来は映画関係の職業に就きたいくらい映画が好きです。テレビのドキュメンタリー番組を横目で見ることはあったのですが、ドキュメンタリー映画を観るのは、この講座が初めてでした。

 

――作品を観て、どんな感想を持ちましたか。

 

(高井さん)言葉にするは難しいのですが、リアルをそのまま突きつけられた思いです。『ブラッド・ブラザー』を観たとき、こういう現実があるということに驚きました。自分は何不自由なく暮らしていますが、それは決して当たり前のことではないと心底感じました。私の日常とかけ離れた生活をしている人がいることを想像はしていましたが、想像をはるかに超えた現実があり、それが彼らにとっての日常だと知ってショックでした。

 

――映画のテーマの一つは「人生の選択」でした。

 

(高井さん)主人公の過去が関係していると感じました。自分が愛情を受けられなかったことを、孤児院の子供たちに重ねているのではないでしょうか。何かを感じて引っ張られて、心のままに動いたのでしょう。失敗を考えていたら先に進めません。少しの好奇心と勇気で、心に正直になったことがその選択だったのかなと思います。

 

――他の生徒の意見で覚えていることはありますか。

 

(高井さん)エイズは日本では落ち着いていて、過度に警戒するものではありませんが、世界に目を向けるとそうではないということ。自国と他国とのギャップに衝撃を受けたという意見が多く出ました。こんな小さい子供が、と。

 

――高井さんが作品から得たものは何でしょうか。

 

(高井さん)事前に準備していなくても、私がここまで喋ることができるのは、相当な衝撃があったからだと思います。現状や日常の「当たり前」に感謝したいです。「もうちょっと」と欲が出ることもありますが、当たり前だと思っていることのありがたさに気づきました。

 

――韓国の受験戦争についての作品も視聴しましたね。

 

(高井さん)韓国は容姿を重視する国というイメージを持っていましたが、容姿だけではないのだと思いました。その人の中身ではなく、見た目やレッテルが大切。日本も同じような傾向がありますが、韓国ほどではない。韓国はそれが強い集団に思えました。

 

――この作品で得られたものは何ですか。

 

(高井さん)学歴も大切だし、頑張ったことの成果なので、その評価をゼロにしてはいけないと思います。ただ、学歴だけで人を判断してほしくない。たくさんの中から人を選ぶ時には学歴も必要だと思いますが、その人自身にも目を向けたいです。私は来年、受験を控えています。親も先生も「いい大学を」と言いますが、自分らしさも大切にしたいです。みんなと違うことに不安を覚えたり、何かを選ぶ時にみんなに合わせたりしがちですが、周りにどう思われても自分が納得できればいいと思っています。


普段の授業では学べないことを学ばせてもらいました。実際に知的になったかどうかは分かりませんが、考えは変わったし、成長したのかなと思います。

 

――生徒どうしの意見交換で気づいたことは何ですか。

 

(高井さん)自分一人だと自己完結してしまい、自分が気になるところしか見ないし、周囲の人に話すこともありません。ディスカッションや共有で、自分以外の視点や疑問を知ることができます。10人いれば10通りの答えがあり、他人を理解するのは決して簡単なことではないと知りました。


 

先崎遥奈さん(高校3年生)

 

――この講座を受講しての率直な感想を教えてください。

 

(先崎さん)映画の感想を他の人と共有できるのが楽しいです。今までドキュメンタリー映画を観ようと思ったことがなかったので、見たことがないジャンルの映画を見られるのも新しい発見でした。視聴した作品は『ブラッド・ブラザー』『デジタル人民共和国』『街角の盗電師』の3本です。一番心に残っているのは『デジタル人民共和国』。配信者に給料以上のお金を貢ぐ人、理想を求めすぎる配信者、みんな心の拠り所を求めているのだろうけど、芯を持って行動することが大切だと思いました。配信者に自分のコメントを読んでもらうのではなく、自分の力で変わればいいのに、どうして一度きりのコメントに頼ってしまうのか不思議です。その場だけの救いを求めているように感じました。

 

――配信者も幸せではなさそうですよね。

 

(先崎さん)最初は配信が楽しかっただろうに、家族にも自分を「お金」としか見てもらえない。そして配信会社が悪役的な存在。裏の世界が見えました。日本でも、承認欲求が暴走している人がいますが、彼らの場合は認められたい気持ちよりも、その場のノリという感じなのかと思います。

 

――『ブラッド・ブラザー』と『街角の盗電師』についてはどんな感想を持ちましたか。

 

(先崎さん)初めてみたドキュメンタリーが『ブラッド・ブラザー』で、私が今住んでいる世界との違いに驚きました。病気の子供たちのために故郷に帰らず活動する姿に感銘を受けました。もっといろんな作品を見たいと思いました。


『街角の盗電師』は日本との格差に驚きました。電気がないのが当たり前。役人に意見しても何も変わらない。電気代も賄賂も請求され、操られているようで、観ていて辛いところもありました。電気を盗む人に同情はできませんが、私たちが当たり前と思っている生活ができていないのだから、もう少し歩み寄ることができないのだろうかと思います。

 

――次回の作品はどうやって決めるのですか。

 

(先崎さん)講座の参加者全員で映画の予告編を観て、次回見たい作品を1人2〜3作品選んで決めるのです。『街角の盗電師』は、私も選びました。予告編を見たとき「電気を盗む」ということが理解できませんでした。どう物語が展開するのだろうと関心を持ちました。

 

――この講座で得られたものは何ですか。

 

(先崎さん)感想や意見を共有することで、自分とは違う視点を得られました。意見を交わすと、話の幅が広がります。土曜講座はほとんどが初めて会う人なので、いろいろな視点から話が聞けてよかったと思います。『デジタル人民共和国』の回では、自分には「推し」がいるのでお金を出す人の気持ちが理解できましたが、推しがいない人にとっては理解できないのです。共感ポイントは推しがいる人の方が多くなりました。

 

――他の作品も観たいと思いますか。

 

(先崎さん)一つの作品を観ると「この国はこうだったけど、別の国はどうなのだろう」と続けて観ていきたくなります。ドキュメンタリーには、台本がない映像だからこその面白さがあり、興味が湧きました。

 

――作り手が発する「メッセージ」について感じることがありましたか。

(先崎さん)共感する部分はもちろん、できない部分もたくさんあって、考えをまとめるのが楽しいです。そして、自分の考えを持つことの大切さを知りました。いい経験をしていると思います。


 

――弊社には「ドキュメンタリー映画を観た後でどうすればいいのかわからない」という学校からの問い合わせが来るのですが、何かアドバイスはありますか?

 

(金岡先生)対話と傾聴の場を提供すれば、こちらは何も仕掛けなくていいのです。感じたことを共有する空気を作ってしまえば、おのずと答えが出ます。私たちが求めている深まり方にならないこともありますし、「こう展開したらもっと世界史と絡むのに」という思いもありますが、生徒たちの気づきだけで進行したほうが浸透しやすいと思います。


総合的な探究の科目、社会科や公民、小学校なら生活科との親和性はあると思います。ディープなことはできませんが、同じテーマをもって学年単位で活動することはできるでしょう。ただ、授業に入れた瞬間に、子供たちは受け身になります。国語や数学と同じになる。そうなると本当の魅力を引き出せません。学びは選択してこそだと思います。大人が与えるものは誰が書いたか分からない教科書と同じ。スマホに流れてくる情報と、自分が選んで学ぶことで得られるものは違います。選んだものからは、生徒たちが勝手に学びます。何かを選んで関わるということが21世紀以降の学びには必要な手法だと思っています。


 

利用作品

『街角の盗電師』

『ブラッド・ブラザー』

『デジタル人民共和国』

『SKYに届け!韓国受験戦争』

『秘境をぶっ飛ばせ ミャンマー編』

『その日、その海』

『アングリーバードとバナナ合唱団』

『精神病棟のプロポーズ』

『ふたりのパパ』

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